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2017/1203

資産運用

家族信託は相続対策になるか!?

相続税の増税により、相続に不安を抱える人が増えています。

しかし、超高齢社会では、相続時だけでなく、病気などにより判断能力が低下するリスクにも備えなければなりません。
そこで、最近注目されているのが、「家族信託」という手法です。

「家族信託」とは、一言でいうと『財産管理の一手法』です。
資産を持つ方が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。
いわば、「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」と言えます。
家族・親族に管理を託すので、高額な報酬は発生しません。
したがって、資産家のためのものでなく、誰にでも気軽に利用できる仕組みです。

現在は、相続対策といっても、生前の病気などのリスクにも備える必要が出てきており、特に心配されているのが、「認知症」です。
厚生労働省が発表した推計によると、8年後の2025年には認知症患者が700万人に上り、65歳以上の5人に1人が認知症という事になるようです。
当然意思能力が低下すると、資産は動かすことができず、相続対策も着手しにくくなります。この対策として一般的に言われているのが、任意後見制度です。
こちらは、元気なうちに財産を管理する後見人を選定することができる制度ですが、実際に機能するのは判断能力が低下してからです。
財産は裁判所の監督下に置かれ、現実的に活用は難しいと思われます。

家族信託の場合は、信託契約をした時点で受託者による資産の管理・運用が始まりますので、資産の管理や運用状況を見届けることができるのがメリットの一つです。
また、任意後見制度は本人が生存中に限られ、本人の死亡と同時にその業務は終了してしまいますが、家族信託は本人が死亡した後も効力を持続させることが可能ですので、冒頭の例のように受益者である相続人が財産管理できない場合も、資産の管理は引き続き受託者が行うことができます。

相続対策として、本人の意向を踏まえ、事前に遺言や任意後見などをしておくことで、事後のもめ事を極力避ける方法が検討されてきました。
その一つとして家族信託も選択肢の一つになるとても有効な手立てであると思います。
本人が元気なうちに資産の承継をスムーズに行えるというのが最大のメリットであります。しかし、デメリットとして、例えば、施設への入居などの際、本人にかわって契約手続きを行うことはできません。
その点、任意後見は、身上監護権が認められています。
やはり大事なことは、相続対策をする本人に一日も早く、どのような思いを持って、資産を承継していくのか、その選択肢としてどういうものがあるのかしっかりと準備しておくことです。また、各種対策においても被相続人・相続人間で契約 を結ぶわけですから、家族間でしっかりと話し合いが必要だと思います。